シンポジウム開催報告
9月14日に酒田市総合文化センターホールにて、日本海沿岸地域の津波被害と対策シンポジウムを開催しました。庄内地方日本海沿岸の酒田市、鶴岡市、遊佐町の首長をはじめ、庄内地方内外から250名が参加され、大盛況でした。
津波研究の第一人者である東北大学・今村文彦先生の基調講演の後、今村先生と鈴木代表理事による対談の形式で「庄内地方は津波にいかに対処すべきか」について議論しました。その結果、得られた結論は以下の通りです。これから行われる日本海東縁部の活断層調査によって、複数の活断層の連動や、海域から陸域に連続する活断層の存在が確認される可能性があり、これらの活断層の活動メカニズムが明らかになれば、最悪の津波のシミュレーションも高精度で行える。しかし活断層の活動メカニズム(ソース)の評価が難しいため、津波シミュレーションに基づいて作成された津波ハザードマップの精度には限界がある。色が塗られていないからといって安全だとは思わないこと、最善を尽くしてできるだけ高い場所へ避難することが重要です。
庄内地方の日本海で開発が計画されている洋上風力に対する地震や津波による影響については、押し波による船舶等の衝突もあるが、引き波によっても倒壊した家屋の瓦礫が風車に衝突することを無視することができないこと、津波は海底から海面までの海水の移動であるため、風車の直径が10m近くなると、タワー周りに水が円滑に回り込むことができず、また風車群の存在する沿岸海域で津波の衝突が起こるなど、一般的なタワー構造物とは異なる様相を呈すること、風車基礎の洗堀が起こることを前提とした設計が必要なことなど、設計外力ならびに解析モデルに解決すべき課題があります。
もともとヨーロッパの地震のない、津波の影響を受けない、遠浅の海で設計され、建設されてきた風車を、災害多発国である我が国の自然環境に適合させるためには、台風や地震に対する構造設計が求められます。我が国の場合は、洋上風力の技術基準は決められたものの、まだ建物や橋梁などに適用されている「損傷は受けるが倒壊はしない」新耐震設計法に基づいた風車の設計法が確立されているわけではありません。したがって、地震、津波、台風に対して安全であるとともに、非常時にも人的被害を発生させることのない設計・施工を確立した上で、地域の経済発展に寄与する洋上風力を推進すべきとの結論に至りました。
最後に、洋上風力の安全性評価には、是非、今村先生に加わっていただきたい旨、庄内地方の住民に代わってお願いし、今村先生からは依頼があればお受けいただける旨、確認することができました。シンポジウムに参加された3名の首長が、今村先生にご指導を依頼されることを願っています。
参加者の半数以上がアンケートに回答され、未記入者を除くと約95%の回答者から本シンポジウム開催について良かったとの感想をいただきました。日本海東縁部の海底活断層ならび津波については、能登半島地震がまだ記憶に新しい中ではありますが、多くの参加者が名前だけは知っている程度だったようです。今回のシンポジウムを通して、津波の脅威と避難について正しい理解され、地震や津波に対する安全性について洋上風力を興味を持ってモニタリングしていただければ、主催者として幸甚に存じます。